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代表大野が配信するこれからのお寺の在り方。

寺院経営の「経営」の意味すること

記事作成日:2019-03-25

傳燈(伝灯)とは、法灯を師から弟⼦へと伝え続けることです(師資相承)。

永く永く、永遠(とこしえ)に。

しかしながら昨今は「寺院崩壊」という⾔葉が⽬⽴ち仏法が途絶えてしまうことが懸念されています。いまこそ傳燈を真剣に考えるべきではないでしょうか。寺院経営セミナーを各地にて開催しておりますが、寺院の⽅よりこういう声をお聞きします。

「我々はお寺を経営しているのではない」と。

 

ご指摘の経営とは、⾃分だけが儲かるとか、⾦銭を追求するという考え⽅の事と推測します。その経営の捉え⽅は、ドイツのクラウゼウィッツの『戦略論』から起因します。国家間の戦争で他国より確実に勝つ為の論理が戦略であり、それをベースとしたのが現代の経営論です。

ともすれば他者を潰して⾃分だけが勝つ、⾃分だけが儲かるという要素を含みがちですので、寺院経営の「経営」の意味する事ではありません。

ここで経営の意味を紐解いてみましょう。

 

「経」とは経済であり、「営」とはいとなむという意味です。そして経済とは「経世済⺠」を表しますが、それは「世(国)をおさめて⺠を救う」という意味です。まさしく世の中に貢献し、⺠衆を救うよういとなむことが経営です。

『抱朴⼦』には「以聡明⼤智、任経世済俗之器」と書いてあります。この⼤智を仏法の智慧ととらえます。聡明で⼤いなる智慧があってこそ経世済⺠ができると讃えています。それは仏教者の姿ではないでしょうか。

戦国時代から江⼾時代にかけて活躍した商⼈で⾓倉了以がいました。彼は海外貿易で⼤いなる財を築きますが、その財により運河をいくつも開削しました。

京都の保津峡くだりをご存知でしょうか。⻲岡から嵐⼭まで保津川の峡⾕を⾈でくだる景勝地嵐⼭の観光スポットです。この保津川、実は⼈⼯で開削した運河なのです。あの峡⾕と濁流を経験した⽅は、どれだけ難⼯事であったのか容易に想像できることと思います。

⾓倉は京に住む⺠がよりよく⽣きるために、私財を投じて⼯事を⾏い、保津川を⻲岡から⼤量の物資を運ぶ運河として機能させたのです。⼀⽅、⾓倉は京都の繁華街の⽊屋町に流れる⾼瀬川をも開削していますが、三条から宇治までの⻑いルートを運河で通し、⺠の運搬の便としています。現在の京都の発展に⼤いに寄与していると⾔えましょう。⾓倉了以は、経営で得た⼤きな利益を運河の開削によって⺠に還元したのです。まさに経世済⺠です。

 

永く続く商家には、「蔵をあける」という⾔葉が残っているそうです。商⼈は蓄えた利益を貯蔵するために次々と蔵を建てていきます。⼤商⼈と呼ばれる商家では何棟もの蔵が⽴ち並んだことでしょう。実は蔵を建てる理由は、飢饉等で⺠が苦しんだ時に「蔵をあけ」て、貯蔵した物資を無償で分け与えるための準備です。まさに布施波羅蜜です。⽇本で培われた経営は、政府(幕府、朝廷)が何かをするのを待つのではなく、⾃ら⺠の幸せを考え、来るであろう危機に打ち勝つために準備するのです。⽇本には楠学問という考え⽅があります。

楠からは医薬品として使⽤する天然の樟脳がとれたために、どこでも⼤切に育てられたそうです。楠はかなりゆっくり成⻑しますが、どれも確実に⼤樹となります。それを⾒て⺠は、永遠に成⻑し発展するとして、楠より多くを学んだそうです。

 

神社及び寺院では⼤樹をご神⽊として祀る姿を拝⾒しますが、多くは楠です。実は⾃坊にもあり、その⼤樹を⾒上げて私も育ちました。⺠は楠の⼤樹を畏敬し、多くを学び、成⻑と未来を祈ったのですね。

永い時を継続し、⺠を⾒守り⼤樹となるよう成⻑する考え⽅、それが⽇本の経営です。

⾃分だけが打ち勝ち利益を得るような考え⽅とは、まるで異なる事がお分かりの事と存じます。戦争に勝つための戦略ではなく、慈愛の戦略と考えることができます。ある調査によると創業200年を超える企業は世界に5586社あり、その56%が⽇本の企業だそうです。

 

なるほど上記のような経営の考え⽅ならば納得できます。

 

実はそれ以上の歴史があり、今なお継続している法⼈が、その10倍の50000件を超えるのをご存知でしょうか。これが寺院です。どうしてこれだけの数が継続できたのでしょう。寺⼦屋で象徴されるように、寺院は⽇本で培われた経営の舞台だったからです。実に巧みに経営され、村の中⼼として機能し、⺠を豊かに導きました。同時に傳燈は継承され、師資相承し、寺院は次の世代へと継承されていきました。

寺院経営の経営とは、仏法の慈悲を実践する経営と捉えられるのではないでしょうか。

寺院経営の意味を理解いただき、寺院の継承にいかしていただきたいと願う次第です。

 

感謝合掌

寺サポート 代表 ⼤野 雅仁
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